石ころとキャンディ

わたしの中に小さく転がっていた石ころは
わたしが耳をかたむけ始めてから
しばらく経ってからポツリ言葉を発した。

それはそれは長い沈黙だった。

石ころの返事が待ちきれなくて
わたしはいろいろな所に行った。

時には、わかっていて寄り道をしてみたり。
時には、これが答えだ!と自分を言い聞かせてみたり。

わたしが石ころの返事を聞く準備が整えば
石ころはちゃんと答えてくれたのに
返事を聞かずに席を立ったのはわたしの方だった。

さんざん寄り道をしてから席について
ちょっと一呼吸をしてみると
ポツリ言葉を耳にした。

それはあまりにも小さな声で
くしゃみでもしたらかき消されそうなほどだった。

わたしはくしゃみを我慢して
その音を確かに聞いた。

あぁ、そうだったのか。

どんな綺麗な言葉で飾ろうと
やっていることは変わらない。

それは、いろんな姿をしてわたしの目の前に現れる。
甘いキャンディを持って
いろいろな言葉を使ってやってくる。

キャンディはそのたびに違う香りを放すので
違いには気づきにくいけど
材料は同じものでできていた。

小さな石ころは、どんなキャンディをあげても
うんともすんとも言わないもんだから
わたしはそのたびに違う味のキャンディを差し出すのだけど
あいも変わらず小さな石ころは沈黙を守る。

小さな石ころは確かに言っていたんだな。

欲しいのは違う味じゃないの。
キャンディは欲しくない、ただそれだけ。

わたしはやっと聞こえたこの声を耳にして
おおいに笑う。

そしてキャンディの正体を知った。

甘い甘いキャンディ。

わたしははじめから知っていたんだ。
キャンディは要らないって。
何者にもなりたくないんだって。