唄う白い鳥

きみは、きみの名を授かり
きみは、きみの名にふさらしく振る舞う。

いままで何人のひとに
その名を呼ばれたことだろう。

その名を呼ばれれば、呼ばれるほどに
きみはその名を受け入れる。

その名を耳にすれば、するほどに
きみはその名を魂までに刻み込む。

そして、人並みに悪さなんかしたりして
大きくなったきみは想う。

わたしは いったい 誰だろう… と。

そして、旅に出る決心をする。

旅の途中で
白い鳥がわたしに聞く。

「なにか探しもの?」

わたしは答える。
「自分がいったい何者なのか…」

わたしは続ける。
「そして、何故ここへ来たのかを知るために家を出たんだ。」

白い鳥は不思議そうにわたしを見ると、ひと言
「そう。」と呟いた。

それから、大きなビワの木にとまると
「じゃあ、答えてあげるけど」
「あなたは、自分を呼ぶ時に何て呼ぶの?」

「わたしは、「わたし」と呼ぶよ。」

しばらくの間、白い鳥はだまってわたしを見つめ
それからひとつの大きなビワの実を落とした。

「お食べなさい」

わたしはビワの実を拾い、食べながら白い鳥を見上げると
白い鳥は、こう言った。
「あなたは、わたし」
「ビワの実は、甘くてすっぱい」
「そして、中には大きな種がある」

それから白い鳥は、ビワの木の葉を揺らしながら青空へ飛び立ち
「それで十分じゃないの。」
「さぁ、家へ帰りなさい。」

わたしは手のひらに残ったビワの種を落とし
その場に立ちすくんだ。

種は柔らかい土の上に転がり
温かいその場所に
次の芽を息吹く準備をする。

白い鳥が揺らした木の葉たちを
いつの間にか風が歌うように揺らし
白い鳥は雲のように青空に消えていった。

風が白い鳥の唄を届ける。



ある旅人がわたしに歌うの

おまえは綺麗な声で歌うために
この世界に生まれた

ワタシにはおまえの様な歌声はないけれど
きっと何かが待っているはず

そう信じて旅にでた
探しものは見つからず
道に迷って疲れはてたワタシに
どうか歌っておくれ
どうかおまえの名前を教えておくれ

わたしは旅人に歌うの

歌う歓びを
飛ぶ歓びを
命を繋ぐ奇跡を
味わうために

そして
歌わない静けさを
羽を休める心地よさを
命を頂く尊さを
味わうために

ただそれだけに
わたしは生まれた

そして
わたしに名前を尋ねるならば
どうぞ、お好きなように呼んでちょうだい
アナタがどんな名前で呼ぼうとも
わたしは何者でもない。

ただそれだけのことよ。