1羽のツバメ 2015.9.11

2015.9.11

春にビービー鳴いていた子どもたちは
いつの間にか大きくなり
兄弟たちと共に
巣から飛び立った。

はじめは心細さに群れていたツバメも
秋の風を感じる頃に
それぞれの場所へと向かった。

夏の賑やかな空と違って
ちょっと高くなった空は
優しいけれど厳しい風で

「さぁ、行くのですよ」

と、ツバメたちを
それぞれの場所へと向かわせた。

ツバメはまだ知らない初めての冬を
ひとりで超えるのです。

葉をすっかり落とした樹は
不思議そうに空に尋ねた。

「どうして、そんなに厳しい風を吹かせるのですか?
まだ、こんなにも小さい彼らに」

空がそれに答えるように
枝を優しく揺らすように風を送ると
樹は何かを思い出し
それ以上、空に話しかけることをやめた。

春を待ちわびる、まだ見ぬ新しい芽が
何も知らずに
それでも
ちゃんと全てを知って
安心したように眠っているのです。

そこには「信頼」という名の「命」しか無かった。
そこには「信頼」という名の「愛」しか無かった。

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